15人が本棚に入れています
本棚に追加
2
結城リリア、十五歳。
世界魔法使い連盟から通知がきたのは、十五歳になる誕生日の前日だった。
【今、魔法界は全滅の危機に瀕している。
魔法離れが続き、人間のような危険分子があちこちで進化している。そこで、我々魔法使いは生き残るために人間界に潜入する作戦を決行することにした。
ひいては、結城リリア殿を魔法使いの一員として、
B県にある超能力研究所付属高等学校に遣わす。そこで、魔法を超能力として活用し、潜入してもらいたい。大魔法使いメリエ・グレースより】
という手紙が届いた。
それから半年、わたしは日本語を覚え超能力高校の試験を受けてようやく日本に来た。来たのだが…。
「…ですから、制服は?」
「忘れました」
まさかこっちに来てから物質製造魔法でつくるつもりでした、とは珍しい超能力が使える色素欠乏症の日本人として来ているからには言えず。
しかも日にちを間違えて来てしまったので、着いたときには入学式の真っ最中だった。
飛び入りで入学式に参加して、良い人材を見つけようとしたのだが清水、というらしい三十手前の女性の先生に見つかり、叱られていた。
こちらに来て、魔法使いを受け入れられる人間を探すこと。それが潜入の目的だった。
メリエのおばさんめ、難しい任務ばっかり送ってきて、本当に困る。
そもそもわたしは結城リリアではなくリリア・グレースなんだから、どうして人間界なんかに…
などと考えていると、
「ちゃんと聞いていますか、結城さん?」
「は、はいもちろんです」
人間界は苦労が多そうだ。
各クラスに別れてホームルームをしていた時、わたし、上地ゆりあのクラスにあの少女が制服を着てやってきた。この高校の制服は白いブレザーに紺色のスカート、リボンはワインレッドとスカートと同じ紺色のしましまというわりと可愛い制服だ。
白っぽい髪と赤い眼の少女によく似合っている。
わたしが少女を観察していたからか、その少女がこちらを見た。
(うわあ、目が合っちゃった…)
そう思い、わたしから目をそらす。
<あの子、入学式の最後に来た子だよね>
<なにあの子超可愛い>
<何あれ、睨んでるの? 怖い…>
周りの声が伝わってくる。
しかし、
(あれ、あの女の子の声がない…)
もともと無口な少女なのだろうか?
すでにわたしたちは自己紹介をしていたからだろうか、その少女は大きくはないが、よく通る凛とした声で言った。
「結城リリアです。よろしく」
そう言い放つと、一つだけ空いていた席に座った。
「というわけで結城だ。みんな、よろしく頼むぞ」
担任の菅山先生が言った。
三十前半くらいの男の先生で、ゴリラとでも言われそうな体つきをしている。
きーんこーんかーんこーん。
チャイムが鳴って、生徒たちがバラバラに立ち上がる。そのまま知り合いと寮に戻る者もいれば、途中からやってきた少女…結城リリアさんに群がる人もいた。
ゆりあは美乃と共に後者を選んだ。
「ねえ、結城さんってどこ出身なの?」
「結城さん、髪の色とか眼の色って、もしかして病気?」
「結城さんはどんな超能力なの?」
当たり障りのない質問から、結構突っ込んだ質問までいろいろある。
「海外で産まれた」
「色素欠乏症なだけ」
「超能力は軽々しく口にしないから」
などと結城さんは質問を綺麗にかわしていく。
(ちなみにわたしは何も質問しなかった…
こういうときにおどおどしてしまうのが悪い癖なんだ…)
と、
「そろそろ帰りなさい」
入学式で結城さんを追いかけていた先生が現れた。
「はーい」
みんなぞろぞろと寮に戻っていく。
わたしも美乃と寮に戻ろうとする。
だがしかし。
「ねぇ、あなた、上地さんよね?
あなたの部屋に結城さんも入ることになったからよろしく頼むわね」
「ええ!?」
最初のコメントを投稿しよう!