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「あ、あの、よろしくお願いします」 「よろしく」 わたし、リリア・グレースもとい結城リリアはこのおどおどとした上地ゆりあと同室になった。 この高校の寮は全て二人一部屋になっているらしく、 さっきクラスメイトに囲まれたわたしを遠巻きに眺めていた女子のうちの一人と同じ部屋になったのだ。 まあともかく、とりあえず着替えることにしよう。 窮屈な制服を脱ぎ始めると、 「ちょ、着替えるんですか? わたし、あっち向いてますね?」 「いや、同じ性別だろう? 構わないから」 わたしはいつもの黒いワンピースに着替える。 「なぁゆりあ、夕食はいつなんだ?」 「七時頃だと思いますけど」 「ゆりあ、敬語はいらない」 「し、七時頃だと思う」 なんだこの女の子面白い! 顔を赤らめて恥じらいながら言うゆりあを見て、わたしはそう思った。 「いただきます」 (やっぱり、結城さんって変だ…) 妙にお上品に食事をする結城さんを見てわたし、上地ゆりあは思った。 (いくら頑張ってもテレパシーが通じない…) 部屋にいる間、頑張ってみたのだが、通じなかった。 (もしかして、結城さんの超能力は超能力が通じない超能力なのかもしれない) そう考えると少し落ち込んでいた気分がなおって、止まっていた手を動かしてサラダを食べはじめた。 「ねぇ、結城さんって好きな食べ物あるの?」 「砂糖」 簡潔な答えが返ってきた。 (砂糖って…甘いものってことなのかな…) 「わたしもチョコレートが好きだよ」 「それって砂糖入ってる?」 「どうだろう? 入っているんじゃない?」 「そっか」 和やかに食べながら結城さんと話していると、 「ねぇ、ゆりあ、入っていい?」 「あ、美乃ちゃん。いいよ」 美乃がわたしの隣に入ってきた。 (わたしは今男子が憧れるところなのかもしれない。 隣に美乃ちゃん、目の前に結城さんの美人コンビだよ?) 「結城さん、北城美乃です。よろしくね」 「よろしく」 結城さんらしい簡素なあいさつと美乃ちゃんらしいにこやかなあいさつだ。 そこへ。 「上地さん、あなたテレパシーだったわよね?」 教室でわたしと結城さんが同室だと告げた先生が現れた。 「はい、そうですけど」 「この中で、須々木菜々さんのことを知っている人がわからない?」 <今、須々木さんが行方不明なんだから、緊急事態なのよ。テレパシーの中では能力が高い上地さんか三園さんに頼んでみるしかないわ。いちいち探す手間もはぶけないのよ> 清水というらしい(これは名札でわかった)先生の心の中を少しだけ覗いてから、 「わかりました」 と返事をする。 「えーと、端の方…食堂の入り口のすぐ近くにいる人の中にいます」 「ありがとう。そうだ。あなたたちも食事が終わったら須々木さんのことを探してくれるかしら?」 「はい。もちろんです」 結城さんが返事をする。 わたしは美乃ちゃんと顔を見合わせる。 (ま、いっか…) そうしてわたしと美乃ちゃん、そして結城さんは夜の学校を探検することになる。 事件に巻き込まれてしまうことになるとは知らずに。
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