言霊通信社

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 そんな二人を、遠巻きにした社員たちが驚いた顔で見ていた。  温厚で誰にでも親切な良平が大男の前で屈んだ時は、押しつぶされるのではないかと心配し、女子社員たちは両手で顔を覆いかけたが、予想は覆えされ一本勝ちの雄姿を見せた。  カイルに至っては、他人に怜悧で冷たい印象を与え、彼を知らない者には近寄りがたく感じさせるのに、暴漢を退治する熱血キャラを演じた後、それが板についてしまった俳優よろしく今は完全に俺様キャラに変身してしまっている。  社員たちは面食らって、何と声をかけていいのか戸惑っていた。  固まる社員たちを後目に、良平が警察官のポケットを探って警察官IDカードを取り出すと、ひっくり返して裏を確認してから、カイルに投げわたした。 「偽物だよ。名前が書かれた表はそれらしくプリントしてあるけれど、裏は真っ白だ」 「ほんとだな。おい、誰かシティーポリスに連絡して、このカードに書かれている名前の警察官がいるか聞いてくれ。本物のIDカードをコピーしている可能性もあるからな。もちろんこいつらを迎えに来るように言うのも忘れないでくれ」
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