言霊通信社

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「言霊の研究をしていた良平のレポートを偶然読んで、俺が声をかけた。今の会社の基礎になる夢を語っていた時に、一緒に頑張ろうと良平が出した手を、俺は握れなかったんだ。で? 良平は俺にどうしたんだっけ? 嘘をついても正直(まさなお)くんがクレームをつけるぞ」  話の続きをカイルからバトンタッチされ、良平は肩をすくめて溜息をつくと、悪戯を見つかった子供が言い訳を口にする時のように、面白くなさそうに語り始めた。 「将来人の上に立つのだったら、握手ぐらいできるようにならないといけないとカイルを説得したんだ。意識して触るのが無理なら、スポーツのルール上、必要なこととして体感させれば、人に触れるのが大丈夫になるんじゃないかと思って柔道を勧めた。でも、最初は俺に触るのも嫌だろうと思って、スポーツインストラクターのロボットを使ったんだ」 「究極の選択だな。あんな大きなロボット相手に、技をかけるのかと思うと正直怯んだね。でも、俺が技をかけてもスポロボはびくともしないんだ」  ロボットを相手に、おっかなびっくり柔道の技をかけようとするカイルを思い描いた社員たちは、笑いを必死で堪えている。  
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