言霊通信社

17/23

77人が本棚に入れています
本棚に追加
/128ページ
 元来、スポーツなどの素早い動きを可能にするロボットは、二足歩行ではない上に、無理な姿勢でも倒れないことを考慮して、下半身の重さを増すことで安定を図っている。  テニスや野球など離れてやるスポーツなら問題はないが、組技をする柔道では、技をかけようにもびくともしないばかりか、万が一倒れて下敷きになった場合、命の保証はない。  きっと及び腰になっただろうカイルを想像すると、普段のクールなイメージは完全に崩れ、誰かが噴き出したのをきっかけに、社員たちはとうとう笑い出した。 「薄情だよな、みんな。俺が必死で過去の汚点を告白したのに、笑うなんて」  口を突き出して文句を言うカイルの目が笑っている。正直(まさなお)くんがまた訂正を入れた。 「カイルの言うことは間違っています。薄情だとは思っていません」 「はい、はい。正直(まさなお)くんは正常だ。ブラックスワンがクレームをつけてきたって、受けて立つ。なっ?ベン。お前も正直(まさなお)くんはどこもおかしくないと思うだろ?」  急に話をふられて、ベンが面食らったようにキョロキョロ視線を動かし、慌ててその通りだと頷いた。だよなと口元に笑みを浮かべるカイルの目は、今度は笑ってはいなかった。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加