77人が本棚に入れています
本棚に追加
/128ページ
元来、スポーツなどの素早い動きを可能にするロボットは、二足歩行ではない上に、無理な姿勢でも倒れないことを考慮して、下半身の重さを増すことで安定を図っている。
テニスや野球など離れてやるスポーツなら問題はないが、組技をする柔道では、技をかけようにもびくともしないばかりか、万が一倒れて下敷きになった場合、命の保証はない。
きっと及び腰になっただろうカイルを想像すると、普段のクールなイメージは完全に崩れ、誰かが噴き出したのをきっかけに、社員たちはとうとう笑い出した。
「薄情だよな、みんな。俺が必死で過去の汚点を告白したのに、笑うなんて」
口を突き出して文句を言うカイルの目が笑っている。正直くんがまた訂正を入れた。
「カイルの言うことは間違っています。薄情だとは思っていません」
「はい、はい。正直くんは正常だ。ブラックスワンがクレームをつけてきたって、受けて立つ。なっ?ベン。お前も正直くんはどこもおかしくないと思うだろ?」
急に話をふられて、ベンが面食らったようにキョロキョロ視線を動かし、慌ててその通りだと頷いた。だよなと口元に笑みを浮かべるカイルの目は、今度は笑ってはいなかった。
最初のコメントを投稿しよう!