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言霊増幅装置は、一つの言霊に一台が使用される。いきなり割り込んだ真実は、手のひらサイズでしか投影されず、正直くんの肩も透けている。
良平が首を振りながら、正直くんの隣にある言霊増幅器の電源を入れた。
半筒の壁に張り巡らされた電気伝導体によって、電気が渦を巻くようにして作られた磁場に、研究成果のその他の様々な物質が合わさった気流が充満し、言霊を擬人化させるボックスの準備が整った。
「真実、正直くんのパーソナルスペースを侵害するんじゃない。こっちへ移ってくれ」
小型の真実が消え、隣の言霊増幅装置に人間大になって現れると、正直くんがほっと溜息をつく。
「あら、ありがとう。良平は相変わらず、気が利くし親切ね。それに比べるとカイルって、いつもすかしていけ好かない」
「俺だって、真実を振りかざして、相手の気も気遣わずに、がなり立てるずうずうしい女は嫌いなんだ」
「何ですって!?カイルが人を気遣ったことがあるっていうの?」
「おい! 二人ともやめてくれ。正直くんが怯えてるじゃないか」
「良平、こいつは人じゃないから、二人目としてカウントするな」
「そうよ、カイルと同じ人にしないで!」
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