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カイルはすっと目を逸らし、口を尖らせると、聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
「あの女に似てるんだ」
「えっ? 誰に似てるって? 」
「俺の母親だよ。私の言っていることが全て正しい。人に触ってはいけません。病気になりますよと言い続けながら、俺にも触れることが無かったあの女にね」
良平の記憶にある手も握れなかったカイルがまた顔を覗かせているようで、良平は心配になって、そっとカイルの腕に触れた。
物言わぬ良平の優しさを受け止め、カイルが大丈夫だとでも言うように、自分に触れる良平の手を、パシッと叩いて笑顔を見せる。
「心配させて悪かった。ほら、他人に触れないのはお前が治してくれただろ? 感謝してる。でも、人嫌いだった頃の表情は未だに抜けなくて、冷たいとか、近寄りにくいと言われるけれどな‥‥‥。足りない分は人好きのするお前が担ってくれるから、時々甘えがでるんだ」
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