【愛歌】の創作会議

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「みんなが大切にしている言霊たちを、奴らに奪わせはしない。何かおかしなことに気が付いたら、すぐに良平か俺に知らせてくれ」  カイルの言葉に、みんなが真剣な顔で頷いたのを見計らって、良平がこほんと咳をして、みんなの視線を集めると、その顔を見回しながら話し始めた。 「会議が中断してしまったから、一つ僕から提案があるんだが‥‥‥。シンディーの言い分は一理ある。どこにでもある立体映像のアイドルを真似てしまうと、言霊の意味がなくなる。神秘性を加えるなら、日本語での短歌や、和歌を言うのはどうだろう? 例え意味が分からなくても、愛の魔法の言葉とか呪文のように受け取ってもらえるかもしれない」  タンカとワカって何だ?と一瞬にして仕事モードに変わった社員たちが、それぞれの顔を見て、知ってるかと聞き合う。  この会社を立ち上げる時からいる社員は、日本文化のブームが起きた時に、歴史や文学に至るまで、古代の日本文化に熱中した者たちなので、短歌や和歌は、当然のことながら知っていると頷いた。 「良平、例をあげてくれ。できれば愛の歌がいいな」  カイルが意地悪く、にやにやと笑って良平を見ている。言い出しっぺの良平は断れるはずもなく、何がいいか考えてから、良く通る声で、節などをつけず素直に日本語を口に出した。
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