78人が本棚に入れています
本棚に追加
もっとも違ったのが、増幅装置内に言霊本体の魂を残した状態で、ホログラムだけが個人の通信機を通して、受信できるように設定されたことだ。
どうしてそんな設定が設けられたかというと、愛歌は企業の仕事の依頼を受ける言霊ではなく、癒しの言霊なので、日中予約が入ることはないと予想されたからだ。
夜間営業をしていない言霊通信社が出した苦肉の策が、入会金を払って会員手続きをとれば、あとは1時間単位の使用料で、愛歌をどこでも呼び出せるというものだった。そして、各々の呼び出し頻度で愛歌のホログラムが成長し、赤ちゃんから大人まで姿を変えるので、プログラマー泣かせの言霊でもあった。
カイルが言霊増幅装置の前に立ち、集まった社員に声をかけた。
「さぁ、みんな、新しいこと尽くめの待望の言霊、【愛歌】の誕生だ。プログラマーのみんなご苦労様。良平、スイッチを押してくれ」
「了解。いくよ。3,2,1,0! 愛歌、僕らの世界へようこそ」
愛歌の誕生を見るために、照明を落とし、操作で遮光ガラスへと切り替えた部屋の中、良平の言葉を合図に、言霊増幅装置の中が、ぼーっと柔らかく光った。
それは、だんだんとはっきりとした輝きになって、尾を引いて回り出し、まるで天の川銀河のように渦をまいた。
最初のコメントを投稿しよう!