愛歌の誕生

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 みんなの呼ぶ声に応えるように、銀河を象ったような渦が光り輝き、いくつかの尾が巻き込まれるように短くなって消えていった。  ディスクのように平たくなって回転する光は、上下にブレ始め、まるでガラスに走ったひびのような青白い電光をバチバチと周囲に解き放つ。  突然、言霊増幅装置の上部から、閃光の矢が垂直に放たれ、ディスクを貫いたかと思うと、ディスク型の光はふわっと広がり、人型へと変わっていった。  言霊増幅装置からの閃光を吸収した人型の光りは、どんどん凝縮されて密度を増し、寝転がった赤ちゃんの姿をはっきりと浮かび上がらせる。  白くてふくよかな頬、大きく潤んだヘーゼル色の神秘的な瞳。桃色に上気した頬。艶のあるベビーピンクの唇。ダークブラウンの髪の毛。  ぷくぷくとした小さな腕や足が、宙をかくように動き、やがてその愛らしい顔が、見守っている社員たちへと向けられた。    内人のほとんどは一人っ子なので、赤ちゃんというものを間近に見たことが無かったが、茫然としている社員たちに向かって、にっこりと笑った赤ちゃんに釘付けになり、知らず知らずのうちにみんなの口元には笑顔が浮んでいた。  
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