再び屋外図書館へ

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再び屋外図書館へ

 愛歌が誕生して1週間ほどが経ち、カイルが呼び出す愛歌は1歳ほどの大きさになった。愛歌の人気は高く、ユーザーからのリクエストで、着せ替えと、成長年齢速度の調整と、成長年齢を希望の歳でストップできるオプションを追加した。  カイルは愛歌の成長をチェックするために、40cmほどの高さの小型の言霊増幅装置を会社から借りて、部屋の中のある場所に保管している。  通常は特殊な透明ケースに入っているのだが、カイルが借り受けたものは、機械本体だけだ。  他の言霊と違い、愛歌は装置の幅よりも広い範囲を移動して、様々なポーズを取るので、透明なケースは無い方が、愛歌を呼び出すのには適していたからだ。  本当は一般の顧客が使用する通信機器を使って愛歌を呼び出し、チェックする方が大事なのだが、増幅装置を使うとリアリティーさが増して観察しがいがあるため、カイルは通信機器と言霊増幅装置を一日置きに使うことを決め、代わる代わる愛歌を呼び出して、成長の度合いや、話し方、話す内容の理解力などを試している。  今日もカイルが帰宅して真っ先に向かったのは、壁際にあるベッドで、その下を探って羽目板を外すと、2重になっている仕切りの一か所に、自分の手の甲をかざして個人識別番号を読み取らせ、もう一つの隠し扉を開いた。
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