再び屋外図書館へ

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 むっとしたカイルが席を立ち、ベッドの上から写真立てを持ってきた。  良平が嫌な予感を覚えた時には、時すでに遅しで、写真立てからぼ~っと浮かび上がったのは査探(サタン)だった。 「良平、久しぶりだな。元気であったか? おお、かわいい女子(おなご)がおるではないか。お主たち、いつの間に子供を作りおった」  カイルと良平が、揃って大きな声で、「査探(サタン)!」と叫んで睨みつけたので、サタンは避けた口を吊り上げて大声で笑ってみせた。  最近カイルは、会社で用意した社員たちの名刺や、言霊たちを紹介した簡単なリーフレット全てに、磁気を帯びる特殊な透明インクで査探(サタン)と書くようにしている。新規で契約を申し込みに来た企業には、多めにリーフレットやパンフレットなどを渡して、相手先の会社内で沢山の人の手に渡るようにしていた。    ベンが逮捕された後、ブラックスワンの黒田社長が行方不明になったと警察から連絡を受けたので、新規の客を含め、念のために社員たちに接触する人間を監視する必要があり、ベンの報告を受けてからも、引き続き社員たちのIDカードに査探の文字が隠されている状態だ。  笑っている査探(サタン)に、カイルが変な冗談はよせと言いながら、報告の結果を促した。 「今のところ、不審な動きはないな。おお、そういえば、一つだけ進展があったのは、明日、良平が屋外図書館で仕事をした後、マライカと会う約束をしたことだ」
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