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マイクロバスからも見える地上から伸びた宇宙エレベーターは、宇宙空間に浮かぶ各コロニーに繋がっていて、人工衛星の映像で見ると、その様はまるで分子の模型のようだ。
コロニーやジェリーフィッシュの内側は、天候、気温、湿度が完全にコントロールされていて、ウィルスカットの空調により、人間に害をもたらす菌は取り除かれた。だが、皮肉なことに、快適な生活に慣れた人類が失ったのは、病原菌に対する抵抗力だった。
もし、防護服を身につけずにドーム都市を出れば、あらゆる病原菌に侵され、重病や死に至る危険がある。
ジェリーフィッシュの外に見える建物は、気温の上昇と、氷河期による樹木の淘汰後に生えた新種の木々に覆われ、苔むし、枝に貫かれ、廃墟と化していた。
だが、透明な壁に遮られた空間に息苦しさを覚える人間たちは増え続け、廃墟さえも彼らの目には自由の象徴に映った。
氷河期の厳しい寒さが緩み、間氷期に移って気温が上がった時、個々への管理の厳しいドーム内の生活に辟易し、人類の弱体化を憂えた人々が結集して、病原菌を恐れずにドームの外へと移住を試み始めた。
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