十二 社会人一年目年末

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十二 社会人一年目年末

 高校の同級生の順子が結婚しました。みんなが帰省する時期を狙って、披露宴が開催されました。  順子が結婚するという事実が意外過ぎて、めまいがしました。順子は女の子の方が好きだと思っていました。私との情事は女子の思春期にある淡い気持ちの波だったのでしょうか。私は順子に会うために、年末、早く休みをとって、電車で移動しました。  故郷に帰って、順子と結婚相手と会いました。普通の平凡な男性でした。 「美由紀はいい人いないの」という順子の問いかけに、気分が悪くなりました。  折角、実家に戻ったにも関わらず、終始、私はイライラしていました。実家に居るのも嫌になって、元旦の夜に東京へ戻る電車に乗りました。  夜の秩父鉄道はほとんど空席でした。四人掛けのボックス席は私だけでした。順子の身体の柔らかさを思い出すと、身体が熱くなりました。電車の中なのに私は服を脱いでいました。  車窓の暗い風景に明るい車内が映し出されます。白いぽっちゃりとした体がはっきりとわかります。車窓に向かって、脚を開くと、黒い茂みが映りました。泣きそうになりました。  東京に戻ってからは、正月休み中はジムも休みなので、ぼんやりと本を読み、テレビを見て暮らしました。  勤務が始まると、恵美さんに電話をしました。恵美さんはとても忙しいようで、時間を取れるかどうか分からないと答えました。  私はどうしても会いたかったので、恵美さんの働いているオフィスで待つと言い張りました。  恵美さんは、仕方なさそうに、 「すごく待たせるかもしれないよ」と言いました。  待つ事は苦になりません。  恵美さんのオフィスは渋谷のスクランブル交差点を渡って原宿に向かって一分くらいの雑居ビルにありました。 恵美さんの指定された向いのビルの喫茶店に入りました。  それほど待つことなく、ベージュの高級なコートを着た恵美さんが現れました。恵美さんは、「飲みたい」と私に言うと、駅の近くの夜景が見える居酒屋に移動しました。 「年末の電話って何だったの?」  恵美さんは飲み物を片手に持って言いました。  私は、何故、あんな電話をしてしまったのか、とても恥ずかしかったので、何も言えませんでした。 「ねえ、美由紀、あれは妄想だったの?それとも本当に外にいたの?」  恵美さんは私が反応しないのにも構わず、話を続けます。  私は公園で裸のまま妄想の恵美さんに電話をした事を告げました。恵美さんは大きな目を更に広げて笑いました。 「美由紀って本当に厭らしいわね、みんなに見られる事ばかり考えているのね」 「恵美さん、頭がおかしくなってしまいそう」  私が言うと、恵美さんは私の手を取りました。 「そんなことないわ、誰だってみんな同じよ」 「恵美さんの事が好きです」  私の言葉に誘われるように、恵美さんは私の隣に席を移り、私の頬にキスをして、尋ねました。 「ねえ、美由紀、他にどんな露出をしたの」  私は、裸エプロンの話と全裸コートで歩いた事、帰省帰りに電車で裸になった事をしゃべりました。  恵美さんは私の話に興奮したようでした。 「これから美由紀の部屋に行こう、したくなっちゃった」  私は頷きました。私たちは店を出ました。  駅に着くと、恵美さんと私はトイレに入りました。トイレの中には誰もいませんでした。  恵美さんは私の肩に手を置くと、コートの襟に手をかけて、ゆっくりとコートを脱がせました。 「もう、プレイは始まっているのよ」  恵美さんは、私のコートを手に持ったまま前に立ちました。「私、美由紀の全裸コートを見てみたい」  恵美さんの言葉に私は頷きました。  私はトイレの中で服を脱ぎました。床が汚かったので、恵美さんが脱いだ服を受け取ってくれました。私は靴以外何も身に着けていない状態になりました。  恵美さんは私の背後に回るとコートを着せました。私たちは向かい合って、じっと見つめ合いました。  恵美さんは、私にマフラーを手渡すと、脱いだ服を手早く私のトートバッグに押し込みました。トートバッグが大きく膨らんでいました。  恵美さんと電車に乗りました。電車は混んでいて、乗客は密着しています。恵美さんは私に密着したまま、コートのボタンを外し、私のお腹を触ってきます。快感が身体を貫きました。  私の家の最寄りの駅で降りて、恵美さんと私は夜道を歩きました。既に私のアソコは濡れていました。  ふと背後を見ると、帰る方向が同じなのか、スーツ姿のハイヒールの女性が歩いていました。恵美さんも女性の存在に気付いて、私に言いました。 「美由紀、コートのボタンを全部外して」  私はびっくりしましたが、恵美さんの言葉に従いました。 「そこの路地を右に曲がって」  恵美さんは私に言いました。十メートルくらい先に狭い路地があります。私は恵美さんが何をしようとしているのか気づきました。  私と恵美さんは通りを路地に曲がると、五メートルくらい歩いた時点で、急に立ち止まり、私のコートに手をかけました。私は音を立てず、コートを脱ぐと、恵美さんにコートを渡して、全裸で立ちました。  後ろにいた女性がこの狭い路地に曲がると、どうなるのか考えると、息がつまりそうでした。  すぐに、ヒールの音がしました。私たちのところから、角までわずかの距離でした。しかし、彼女はこの細い道を曲がらずに、そのまま、真っ直ぐに通り過ぎていきました。 「残念ね、通り過ぎちゃった」  恵美さんが言いました。  私は恵美さんに、「コートを返してください」と言いました。 「あまりに真剣な顔をしないで、怖くなっちゃう」  恵美さんがお道化ながら、私にコートを手渡そうとした時、また、通りから靴音が聞こえました。私は息を飲みました。さっきのヒールの音とは違う低い音でした。きっと男性だと感じた瞬間、私は恵美さんから離れて、すぐそばのアパートに向かって走ると、建物の陰に身を隠しました。  近づいてくる人影は大柄なサラリーマン風の男性でした。恵美さんが小道で私のコートを持って、立っていました。男性は通りすがりにじっと恵美さんを見ましたが、隠れている私には気づきませんでした。男性が通り過ぎると、恵美さんがアパートに近寄りました。 「勇気が無いわね」 恵美さんはアパートの玄関先の灯りの下で塀を背にして、言いました。  私は、恵美さんのそばに戻りました。恵美さんはヒールだけで全裸の私の姿を見て笑いました。 「美由紀、恥ずかしい格好ね、ふふ」  恵美さんは私のコートと私の服が入った鞄を地面に置きました。恵美さんは私がコートを拾う姿を楽しそうに見ていました。  その時、曲がり角のところで、私たちをじっと見ている女性を見つけました。足音が聞こえなかったので、全く気づきませんでした。  私は全裸のまま、恵美さんの横に立っていました。彼女は特に態度を変える事はなく、小道を真っ直ぐに私たちに近づきました。彼女は通り過ぎる際に、気持ちの悪い汚物をみるかのような表情をして私を見つめました。でも、彼女は何も言いませんでした。 「ね、大丈夫でしょう」  恵美さんが私の身体を抱き締めると言いました。独りだと絶対にできない行為でも、恵美さんといっしょなら、ゲームでもしている気分になっていました。
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