八 大学二年冬

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八 大学二年冬

 冬になると、コートやマフラーなどを多用できるため逆に露出の面白さを追求できました。男性の場合は全裸にコートだけで歩くと、足元に違和感がありますが、女性の場合はブーツを履くので問題はありません。ただし、コートを脱げないので、散歩が中心でした。  その日も全裸にコートを羽織って外出し、寒さに体が慣れたところで、前のボタンを外しました。白い乳房とアソコの黒い茂みが露出しました。極力、身体を露出したまま歩きました。人と接近した時と、車のライトに照らされる時だけコートの前を合わせました。  慣れて来ると、前を合わすのも面倒になってきました。スマホを操作して、下を向いている人とすれ違う際は、わざとコートの前を開いたままで歩いてスリルを味わっていました。  散歩の後、私は興奮した体を持て余すかのように、ドーナッツ店に行って、ソファーに座りました。甘いものを食べて、コーヒーを飲んで、心が落ち着いたところで、私の股間を楽しむ男性がいないかと周囲を見て、コートから裸の太腿を投げ出しました。  就職が決まり、卒業が近づき、友達と飲みに行って、部屋に戻る途中、デニムのジャケットにロングスカートという格好で、いつものドーナッツ店に寄りました。  その日は露出をする予定はなく、私はソファーでなく、テーブルの座席に腰を掛けました。隣のテーブルには、パソコンに向かって仕事をしている女性がいました。  コーヒーを飲んでくつろいでいると、隣から聞こえていたパソコンの入力音が止まりました。椅子が床を移動する摩擦音と同時に、私の耳元から低めの女性の声が聞こえました。 「久しぶり」  振り向くと、栗色のストレートヘアの美しい女性がすぐ傍にいました。どこかで見た事のある人だと思いましたが、誰だか思い出せません。目鼻立ちがはっきりした小麦色の肌の美人でした。 「声をかけたかったのに来ないので心配したわ、はじめまして、三島恵美といいます」  ストレートヘアの女性が名乗りました。 「はあ」  私の声は言葉になりません。 「あれ、お名前聞かせてもらっていいかしら」  強い口調に、私は恐る恐る答えました。 「中村美由紀といいます」  女性はじっと私を見つめました。高校の時に付き合っていた順子に似ていました。 「私は恵美、三島恵美です。よろしく」と悪戯っぽく言うと、「ちょっとメールをひとつ書かせてね」とパソコンに向かいました。  私は邪魔をしてはいけないと思って、何も話をしませんでした。しばらく時間がたって、引き上げようかと考えたのですが、もう一度、恵美さんと話がしたくて、 「ご自宅はこのあたりですか。」と私が尋ねると、恵美さんは嬉しそうに答えました。 「近くじゃないけど、美由紀と同じ方向」  私は何も言えず、黙っていると、 「あなたって、この先の公園の向こうの、大きなマンションの横に住んでいるのね」と言いました。 「どうして知っているのですか」  私が尋ねると、恵美さんはコーヒーを飲んで、 「あなたの後を追った事があるの」と言った後、じっと私を見て、「面白い子ね、あなた」と付け足すと、パソコンの画面を閉じて、私のテーブルに席を移しました。 「しばらく見なかったから、もう、来ないかと思ったわ」と恵美さんは言いました。 「卒業前で、忙しくて」  私が照れたように言うと、恵美さんは、 「え、美由紀って大学生、大人っぽいなあ」と言いました。  いつの間にか、私の名前は呼び捨てされていました。でも、嫌な感じはしませんでした。  お互いに軽く自己紹介をしました。恵美さんは二十八歳で、美術大学を卒業してからライターとして、雑誌社に勤めていました。 「知り合いの紹介で入社したもので、使い走りみたいなもの」  恵美さんはスケッチブックを取り出しました。 「イラストも描かれるのですね」 「こうみえても美大卒だしね、写真やウェブページの制作もやるわよ」  恵美さんはスケッチブックを開きます。最初の何枚か、図や文字が並んだページや、イラストが描かれていました。 「私、美由紀の絵も描いているのよ」  恵美さんはスケッチブックのページを何枚か捲った後、私の方に差し出しました。そこにはミニスカートを履いて、ソファーに斜めになって座っている私が描かれていました。  その絵を見た時、私のアソコの芯が濡れるような感覚が襲って来ました。  恵美さんは私の表情をじっと見ていました。 「これ、私ですか、こんなに色っぽくないですよ、別人ではないですか」  私の言葉に、恵美さんは私の手を握って言いました。 「いえ、これは美由紀よ」  恵美さんは更にスケッチブックのページをめくりました。私の太腿が開かれて、私の股間がのぞいている絵でした。陰毛が描かれていました。 「これって私の妄想かしら」  恵美さんの問いに私は何も答えられませんでした。  私が店を出ようと、立ち上がった時、恵美さんはスケッチブックの白紙のページを破ると、メールアドレスと携帯の電話番号を書きました。 「はい、連絡先。で、あ、そうだ、女性が一人で歩くとき、コートの前を開けたままだと危ないわよ」  恵美さんの言葉を聞いて、私の顔は紅潮しました。私は恵美さんのスケッチブックのページを手に持つと、軽く会釈をして別れました。
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