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「テツ……私…今日は帰りたくないの……。」
哲郎は二人の急展開に少し驚いたが、
『据え膳食わぬは男の恥!』という昔の諺(ことわざ)が頭に浮かんだ…。
《まあ、無理しないで……部屋に入るだけでも良いし、手を繋いで眠るでも良いしな……。》
哲郎はここで何か言うのも野暮だと思い、
先に立ち…自分の腕を取らせてレストランを出た。
哲郎は忙しい両親から、何かあったら使うように渡されているゴールドカードと、グループ会社の社長の名刺(大山哲郎)をカウンターで提示して、
スカイツリーの正面のリッチモンドホテル・プレミア東京押上の部屋の鍵を受け取った。
「一番良い部屋しか空いてないんだって…。」
小枝子は、それが哲郎の優しさだったのか…
ホテルの営業だったのか…
まあ哲郎は こういう世界に住んでいるんだなあ…と思った。
「座ろうか……。」
部屋に入ると、哲郎が勧めて座った椅子がシックリくるので、
「プレミアムだね~☆」
「ああ……。」
哲郎のほうが少し緊張しているようだった。
それでは……と小枝子のほうから歩み寄った…。
たわいもない話をしながら哲郎のゆったりとした椅子のひじ掛けに寄りかかる…。
「サエ……おいで…。」
哲郎はゆっくり立って小枝子を抱き寄せる…。
それだけで小枝子は涙が溢れる……。
「後悔してる?……。」
「ううん、こんなに大切にされたの初めてだから……。」
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