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正午を間近にひかえ、事務所の空気はやや緩んでいた。
そわそわと時計を気にする堀(ほり)を尻目に、神原秋也(かんばら あきや)は忙しく書類に目を通し赤でチェックを入れる。
弊社で行われる、大掛かりな学会まで、あと10日。
土壇場になって、最高責任者の課長が体調不良で倒れてしまったのだ。
サブを勤めていたのは、秋也と係長がもう一人いたが、この係長がまるで使えない人間だった。
人はいいが度を過ぎたのんびり屋なので、まるで動こうとしない。
なんとかなるだろ、の声を忌々しく思いながら、秋也は毎日忙しく働いていた。
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