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そして、二人は来た道を戻り、茂みの中に入っていった。やはり大人の体では進みづらく、母親は手こずったが、不思議と行きよりも外に出るまでに時間はかからなかった。
「あ、お母さんの鞄」
息子は茂みの外に出ると、縁石の脇にある鞄を指さして言った。それはたしかに母親の鞄であった。
「ありがとう。よかったわー」
母親はほっとして鞄を拾い上げた。念のため中身も確認したが、幸いなくなっているものはないようだ。
安心して周りを見回すと、息子はもう別のものに興味が移ったようで、すぐに近くにあったキツネの檻をじっと見つめていた。
やっぱりあの動物たちの写真、撮っておこうかしら…。そう思った母親は、息子を連れ戻し、再び茂みの方へと歩いていった。
「あれ…?」
しかし、そこにあったはずの茂みはなく、ただ休憩用のベンチが並んでいただけだった。
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