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「うわぁ、首が長い!」
「そうねぇ、すごく長いねぇ」
母親ははしゃぐ息子に優しく笑いかけた。二人の目の前では、背の高いキリンが悠々と餌の木の葉を食べていた。
「もっとキリンさん見たい?」
「うん!」
息子がそう言うと、母親は息子を抱きかかえた。目線が上がり、より近くで見られるようになったキリンの食事風景に息子は喜び、「すごい!」と声をあげた。
二人はこの動物園に何度か来ていた。家から距離が近く、息子が動物好きだったことから、二人にとっては気軽に楽しめる場所として重宝していたのだ。
敷地はさほど広くはなかったが、キリンにゾウやライオン、ゴリラなど、子供が喜びそうな動物が多く展示されていた。それを目当てに遠方から訪れる人も多く、休日の園内はたくさんの人で賑わった。
しかし、二人が訪れるのはもっぱら平日だった。息子がゆっくり動物を見たがるからだ。今回ももちろん平日だったが、幸いなことに園内に人は少なく、好きなだけ動物が見られて、息子は上機嫌だった。
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