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『 俺には そう言うものは 分からないので… 』
苦笑いをしながらこんな人間とは関わりたくないと足を一歩後ろに下げた恭介。
『……そうですか。 でも私にはビビッと脳に感じるものがあって…』
明らかにガッカリした暗い表情を浮かべる青年に対し、恭介は話を変えるように『 あの、君の名前は? 』と問うた。
『佐々木 千尋です。』
『 病室は? 』
『東側の棟です。 心臓のところで……』
そう述べていると、後ろから看護師がパタパタと小走りでやってきた。
『佐々木さん、 探しましたよ! 診察の時間です!早く病室へ戻って下さい。』
40歳代の看護師は少し苛立ちながら千尋に言葉を放つ。
『あ、すいません でした…』
恭介は ガックリと肩を落とし、看護師について戻って行く青年の背中を見つめながら、( これ以上 変な人と関わらずに済みそうだ )と安堵したのだが…
佐々木千尋は いろいろ恭介について調べ、この病院の脳神経外科医であることが分かったのだろう。
次の日から 千尋は 脳外科の医局近くをよくうろつくようになった。
そうすると…
吉鷹と千尋が会う → 千尋は可愛い → 吉鷹が 千尋を気にいる → 吉鷹が恭介に命令 → 恭介は千尋と会わざるをえない。
このようなループが出来上がっていったのだ。
医局から外来につながる廊下を渡り、扉を開けると、いつも通り栗毛をポワポワさせた青年がいた。
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