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しかし、彼の様子がなんだかおかしい。
壁に向かって右往左往しており、「ポンっ!」と手掌を壁へ押し当てると拳を握って振り返った。
「あ、安斎先生、おはようございます!」
「 おはようございます 」
挨拶をしながら 恭介は千尋の拳に目線をやった。
「安斎先生、すいません。 窓を開けて貰えないですか?」
「 ん? どうした? 」
「蜘蛛を捕まえたんです!」
「 えっ! 」
それを聞くと、恭介は 急ぎ窓を開ける。
窓の外に手を出して、手のひらを広げると5mm程度の黒くて、白い点が2ついた蜘蛛が ピョンっと飛び出し、逃げていった。
「朝蜘蛛は縁起がいいって言いますから、外に逃がせて良かったです」
千尋はホッとした顔で手を窓から引くと 恭介を微笑み見つめ そう述べた。
「 じゃあ、朝以外に出てきた蜘蛛は殺すの? 」
「え…」
恭介の意地悪な質問に、千尋の笑顔は 戸惑った表情になって、困ったように微笑んだ。
「きっと、いつ出てきても同じようにしてます。」
その答えに対して、恭介は 「ふっ」と鼻で笑った。
「 佐々木さん、手を洗わないと。 付いてきて… 」
「あ、 は、はい!」
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