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彼が手を合わせる先には阿弥陀仏像があり、彼の心には『 安斎 亮一 』がいた。
彼の父親は優秀なパイロットであった。
しかし優秀だけではなく、誰に対しても優しく、多くの人を惹き付ける力があり、いつも周りには笑顔があった。
恭介もそんな父親を誇らしく思い、大好きであった。
てんとう虫を虫かごいっぱいに集めてきた時は母親も姉たち(恭介には姉が5人もいる)も『捨ててきなさい!』と叫んでくるばかりであったが、
『 心ゆくまで観察しなさい 』と父親だけが彼の味方であった。
しかし佳人薄命と言うように、彼は40歳にして膵臓の病で亡くなった。
いつも勇敢に空に飛び立っていった父が痩せ細り苦しんで行く姿を、5歳であった恭介には かなりショッキングな出来事であった。
そして、最期に父親から贈られた 言葉 を恭介は今でも覚えている。
『 恭介、いいか? 安斎の家、母、姉達をお前が守るんだぞ 』
彼は一番の末っ子ではあり(しかも念願の男子)、皆から甘やかされて育っていた恭介ではあったが、父のこの最後の言葉を胸に刻み、幼い頃から剣道を始め、 “守るとはなんぞや” を考え 今も行動している。
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