3.湿

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将来のことを考えていると、一瞬 恭介の脳裏に、 “運命” と言う 言葉 と、千尋 の 幸の薄そうな笑顔が浮かぶ。 「 ……… 」 「恭介さん、どうしましょうか?」 「 ……あ、その縁談は、安斎家に取って有益なものとなりますか? 」 「そうですね、先方の御両親はalphaですし、彼女自身もalphaと聞いておりますから、お互い高め合うことができると思いますよ。」 「 そうですか。 ならばお会いしてみたいと思いますが 」 「畏まりました。先方に明日にでも連絡してお会いできる日を取りは習いたいと思います。」 「 面倒をお掛けしますが、よろしくお願い致します。 」 恭介は、母親に頭を下げるとお見合い相手の写真を開いた。 そこに写るのは藤色の着物を着た女性が佇んでおり、自分の美しさを知っているように、笑顔を作っている。 彼女を見つめながら恭介は思う。 ( 自分は間違えていない )と。 彼の行動の中心にあるものは、いつも父との約束。 (互いに知っていけば、 好きと言う気持ちなど、後からついてくる。) 偶発的なものではなく、計画的なものを彼は選んだのだ。
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