3.湿

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「 勘……何の論理も、根拠も無いものに、君は人生を賭けるのか? 俺にはその神経が理解できない。 」 「そうですか? 私は今までの人生を ほとんど直感で生きてきました。 騙されたりもしますが、それは全て自分で選択したものですから、自分の責任です。 私の人生の経験値に基づく勘により、貴方が私の番だと判断しました。」 (人生の経験値?)と恭介は心で笑った。 19歳の成人にもなっていない餓鬼が何をほざいているのかと。 「 あぁ、そう言うこと。 分かったよ。 」 「分かってくれたんですか? 私たちが運命で 繋がっていることを。」 恭介は 冷徹な視線で 彼を見つめ立ち上がった。 「 ……いいや 、 君とは 一生 分かり合えないことが 分かった 」 蔑むように 千尋を一瞥すると恭介はその場を 足早に去っていった。 ーーーーーーーーーーーー 恭介は 苛立ちながら、建物内へ入って行く。 自分が何故こんなに苛立っているのかも分からなかった。 要因の一つとしては、昨晩手術で寝ていないことだろう。 だがそれだけではないのは当然で。 ( 俺のことを何も知らないくせに、どうしてあんなにも 心を真っ直ぐに俺に向けられる? ) 今までの彼の人生において、一度も “勘” で動いたことなどない。 確実な補償や根拠が無ければ、彼は動けないのだ。 しかし それもなく、勘を信じる千尋を考えると、羨ましく思い、自分が臆病者のように感じた。 ( いや、違う…! ) 自分が間違った選択をしていないと、彼は確信を持って拳を握りしめる。 ( 今までだって、そうやってきた。 失敗など無かった。) 彼が向かう先は医局の仮眠室。 扉を上げて 時計のタイマーをセットするとベッドに横たわり、一気に眠気へと落ちていった。
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