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月曜 am8:50
「あぁぁぁぁ〜〜……」
脳外科の医局に叫び声でもなく、唸り声でもない、奇声が響いていた。
「 教授、煩いです。 それ止めてくれませんか? 」
その奇声の主はデスクでパソコンを見つめる吉鷹で、止めるようにお願いするのは恭介である。
医局には恭介の他にもう二人脳神経外科医が存在するが、彼らは早く医局を出て(吉鷹の相手をするのが疲れて)午前の診察に向かっていた。
「うぅぇぇ〜? だってさぁぁ〜 いつも見れてた可愛い子ちゃん、見れないんだよ?
しかも、定期検診にも来てないって……大丈夫か、おいさん 心配で、叫び声が出るのも致し方ないでしょぉぉよぉぉ〜〜」
「 致し方ないとは、思いません。 何かあれば彼方から連絡が来ます。 」
「うわっ、なに その言葉? 冷たっ、アイスコーヒーよりも冷たっ!!」
「教授!それよりも、そろそろ回診の準備して下さい!」
吉鷹は壁の時計を確認するとイスから立ち上がり、恭介が持っているクリーニングの袋に入った白衣を取り出して、急ぎ羽織った。
ボタンを留め終わり、身なりが整うと吉鷹の表情は真剣な眼差しに変化した。
( いつも、この雰囲気だったら…… )と恭介は思った。
恭介は医局の扉をあけて吉鷹が出るのを待つ。
扉の外には大勢の医師、看護師が吉鷹の登場待っていた。
「皆さん、おはようございます。」
「「吉鷹教授、おはようございます!!」」
爽やかな声で挨拶をする吉鷹に、嬉しそうに挨拶を返す看護師たち。
先まで奇声を上げていた人間と、同一人物だとは誰も思いはしないだろう。
吉鷹が先頭に立ちそれを囲むように看護師たちは彼の後を付いて行く。
恭介は最も後ろをゆっくりとついて行くのだった。
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