1.風

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pm10:00 都内の 地下ホームに、20代後半であろう、alphaの男性が二人いる。 1人はグレーのコートを着ており、黒いサラサラの髪をセンターで分け、一重のつり目、狐のような男。 もう1人は、真っ黒のコートを羽織り、二重ではあるが鋭い目つきに、一文字に固く閉じられた唇、190cmを超える大男だ。 狐のような男が、隣りの大男に対して口を開いた。 「ーーねぇ、恭介くん、君は研修終えたらどうするの?」 その問いに対して、構内の床に張り付いた黒く汚れたガムを見ながら大男は答える。 「 まだ 決めてないな… 」 「ーー君の、無頓着なところ、嫌いではないですが、のんびりし過ぎていると 重要な場面を逃しますよ?」 “ 重要な場面?” と、大男は 自分の人生にそんなものは無いように感じた。 この大男の名前は 安斎(あんざい)恭介(きょうすけ)
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