320人が本棚に入れています
本棚に追加
/152ページ
pm10:00
都内の 地下ホームに、20代後半であろう、alphaの男性が二人いる。
1人はグレーのコートを着ており、黒いサラサラの髪をセンターで分け、一重のつり目、狐のような男。
もう1人は、真っ黒のコートを羽織り、二重ではあるが鋭い目つきに、一文字に固く閉じられた唇、190cmを超える大男だ。
狐のような男が、隣りの大男に対して口を開いた。
「ーーねぇ、恭介くん、君は研修終えたらどうするの?」
その問いに対して、構内の床に張り付いた黒く汚れたガムを見ながら大男は答える。
「 まだ 決めてないな… 」
「ーー君の、無頓着なところ、嫌いではないですが、のんびりし過ぎていると 重要な場面を逃しますよ?」
“ 重要な場面?” と、大男は 自分の人生にそんなものは無いように感じた。
この大男の名前は 安斎恭介。
最初のコメントを投稿しよう!