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走りながら、慎也は 恭介に叫んだ。
「ーー私は、AEDを取ってきます!」
「 あぁ、分かった! 頼む!! 」
二人はそれぞれ分かれ、慎也は駅改札口の職員がいる案内所へ向かい、恭介は階段を駆け上がり1番ホームへと向かった。
倒れた人の周りには人が集まってはいるが、彼等はどうしていいか分からず右往左往している。
「 失礼! 」
それらを掻き分け、恭介は倒れた人に近づき床に膝をつくと、肩を叩きながら、耳元に口を寄せて話しかける。
「 大丈夫ですか? 分かりますか? 」
その問いかけに反応はなく、呼吸も微かで一刻を争う状況という事に間違えはなかった。
手首の脈に指を当て心臓に耳を当てる。
( 状況は 最悪だな )
徐脈が現れ、心臓の拍動は消えかかっている。
恭介は騒然と囲う者たちを見つめ、
「 救急車を呼んでくれ! 」と叫んだ。
するとそれに答えるように「あたし、します!」とキャバ嬢のような女性がすぐに電話をしだした。
恭介は心肺蘇生法(CPR)を行うために彼の顎を開けて起動を確保する。その時だった。
「ーー恭介くん! 持ってきました!」
AEDを持った 慎也が到着する。
「 心停止の可能性大だ。AED装着頼む! 」
「ーー分かりました!」
手慣れた様子で慎也がAEDをつけると、電子音声で誘導をかける。
そしてAEDは状況を判断すると、
『電気ショックが必要です。体から離れてください』
人間に指示をする。
「ーー皆さん、離れてください!」
慎也の言葉に辺りの者たちは後ろに下がった。
それを確認すると、慎也はボタンを押し電気が流れた。
ビクッと体が動く。
電気ショックが終わったところで、
女性が「救急車、呼びました!!」と叫んだ。
救急車が到着するまでの平均時間は約7分。
恭介は倒れた人の横に膝をつき、胸部に両手を合わせた。
「いち、にい、さん、よん…」と数え胸部を圧迫し、「…30」となったところで鼻をつまみ空気を入れる。
そうしているうちに、除細動から2分後、再びAEDのガイド音声が流れ出す。
再び電気を流すというコールが流れる。
「ーー恭介くん、離れて下さい!」
「 …分かった! 」
冬の時期にもかかわらず、恭介の顎からは汗が流れ落ちていった。
再び流れる電気。
それが終わると、慎也は「交代してCPRは自分が行う」と、言おうとしたが、そういう前に恭介が動き出していた。
「ーー恭介くん! 代わりますよ!」
そう述べたが、恭介の耳には入ってはおらず、救急車が来るまでの間、 彼は心肺蘇生法を行い続けるのだった。
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