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こちらは 脳神経外科 医局。
安斎恭介が カルテの記入を行なっていると、
「安斎く〜ん、おはよう〜」と50歳過ぎくらいの男性が入ってきた。
「 おはようございます 」
「あぁ〜 そうそう、 またあの子 来てるよ〜 」
のんびりとした声色で、恭介に声をかけるのは、脳外科の吉鷹典史教授だ。
丸顔で丸いメガネ、白髪混じりのキノコのような髪には寝癖が付いている。
温和な性格で日常生活においてズボラな面があるが、脳外科の手術においてこの病院で右に出るものはいない。
吉鷹の腕を信じて遠くの病院から、転院する人もいるくらいである。
「 はぁ…… 」
“あの子”と言うワードを聞いて、恭介はため息を吐いた。
あの子とは、先日から 恭介と番になりたいと申し出ている青年である。
その人間の名は 佐々木 千尋、19歳 omega。
2月に急性心筋炎により倒れ、生死を彷徨っていた人間ではあるが、救急車が来る前の適切な処置のお陰で生きながらえた者である。
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