第一章

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第一章

遠野桜(とおのおう)は、見計らったようなタイミングで鳴った携帯に応答した。 桜の車は、北千住(せんじゅ)駅の車寄せに停車していた。 客を降ろして、自動扉をちょうど閉じたところだった。 電話の相手は個人タクシー仲間の塚本、ツカさんだった。 益子(ましこ)?! あの焼物の? 今から? また、急だね。 確かに、オレッチの仕事は、たいてい急ですね。 いや、お(あつら)え向きに、北千住駅でお客様様を降ろしたところ。 帰りは4時間後か? はー(ためいき)。 迎車表示が光った。 ま、ツカさんの依頼じゃ断れないしな。 そりゃそうだけど、墓場にお金は持って行かれない、とも言う。 にやりとした。 嘘嘘、いつも本当にありがとう。 養育費の足しになる。 声を出して笑った。 上原莉奈(うえはらりな)様ですね? はい、かしこまりました。 これからお迎えに向かいます。 五分後に到着予定です。
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