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第二話 心教会(ハート チャーチ)
ニューヨークの地下を駆けぬける3つの影。
通信回線や上下水道、電力ケーブル、ガス管が張り巡らされた地下密林を、少年を拉致した不審者とロボットが駆け抜ける。
さて簡単に人物紹介をしようか。
++イグ++
―神父。いつも不思議な帽子をかぶっている。帽子はシルクハットのようだ。しかしその帽子は頭の中の金属インプラントを焼き切るデバイスである。IH帽子やIHハットともいう。
イグは何者だろうか。不自然に細い体を持っている。機械の手足だ。
彼は脳にチップは入っていないが、神経の病気で動けないところを教会に救われ、教会に協力している。
脊髄の先は機械の四肢と結ばれている。しかし顔に近い神経系は生まれたときのままで、視覚、聴覚、臭覚、味覚、そして知性と記憶はそのままだ。
触覚はマシンによってフィードバックされるが生身の人ほどには感じられないから、彼はあまり人と触れ合いたがらない。力の加減が難しいらしい。
彼がIHハットを常にかぶっているのは、頭にナノマシンを入れられていないかどうかを常に確認するためでもある。
++コイル++
―イグのしもべ。AI。女性的だが性別は厳密にはない。オスでもメスでもない。多脚ロボットである。仮想空間内では美少女のキャラクターという設定でアバターを持っている。たぶん中高生の男子がコイルを見たら、鼻息が荒くなるかもな。
++ビル++
―イグに救われた少年。イグに脳を焼かれ、ネットへダイブできなくなった。そしてイグに拉致、いや救助されている。
人が幾人か通れる下水管トンネル。ビルは臭いに圧倒され鼻を覆う。
さっきまで異世界を舞台にゲームしていたのに、今は下水管かよ。
そうやって不機嫌そうなビルなど構わずイグたちは進む。
下水管トンネルは整理が行き届いていないようであちこちヒビが入っている。
ふと急にカーブする。ビルはコイルから振り落とされそうになるがこらえる。
大きなヒビの隙間を潜り抜ければ古そうな石の階段がある。
階段を上ると、小さな教会にたどり着く。
”心教会”と英語で書かれている。
奥にはお姉さんがいる。口元をマスクのようなもので隠してるので髪形や目元しかわからないが、たぶん20代前半のシスターだ。ビルの男の子のセンサーが年齢を教えている。
「ああ、彼女は声を失っているから優しくしなさい。」
イグはビルに注意する。
女性の名はアビィというらしい。
こうしてビルは心教会に拉致、いや保護されて、3人+1体の奇妙な生活を送ることになった。
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