22人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
僕と百合子さんは、かなり田舎の、山の奥で暮らしている。
僕が学校に行かなくなって少し経つけれど、百合子さんは、その事を全然責めてこない。
まわりの大人達のように、『元気になった? それなら学校に行きなさい』とか、『気の持ちようなんだから頑張りなさい』とかは言わず、この家に置いておいてくれる。
その代わりと言ってはなんだけれど、僕は百合子さんから家事をテッテイテキに教え込まれている。
「私は君の親ではないんだから、一緒の家に暮らすなら世話はしないよ、自分の事は勿論、一緒に暮らす私の分もちょっぴりやる位の気持ちで暮らしなさい」
なんてのが、百合子さんの持論と言うやつだ。
もちろん、僕もまだまだ家事を完璧に出来ている訳ではないし、百合子さんもそんなことは期待していない。僕が泥水みたいな濃さのお味噌汁を作っても、
「ま、そんなこともあるでしょう」
と言いながら平気な顔で飲んでしまうし、何だかんだと、一緒に洗濯物を畳んだり、二人並んで、鼻歌を歌いながら食器を洗ったりする。
僕は一人っ子でお母さんは専業主婦なので、家に居る間はやったことのない家事ばかりで、これはすごく新鮮な生活だ。
最初のコメントを投稿しよう!