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「お~~」
「そうそう!いいねぇ」
アコースティックギターというのに初めて触った私。
持った印象は見た目よりは軽いということだが、実際に弾こうとすると『大きい』と感じる方が強い。私にとっては顔をやや前のめりにして覗き込むようにしないといけないくらいだ。
「じゃあ、まずチューニングをしよう!」
「チュー……ニング?」
ギターに限った話ではないが、チューニングということをしなければならない。弦の劣化や気候変動による温度変化の影響などの理由で使う際にはチューニングしなければ狂った音となってしまう。
「使うときには弦ひとつひとつの音を合わせておかないといけないの」
「は……はぁ」
「これを、ここにっと」
私の抱えているアコギの先の部分、いわゆるヘッドと呼ばれる部分の先端に黒く四角いものが取り付けられた。
「これはチューナー。弦を弾くとこのチューナーに赤い文字で表示が出る」
「B?…………A?」
戸松部長の説明のように右手で適当に弦を弾いてみるとBだとかAという表示が赤い文字で表示された。
チューナーは物によっては針が動いて示すものや今回使うようにアルファベットだけ表示された小さいものなど数多く種類が存在する。
「このアルファベットってなんですか?」
「ドレミってあるでしょ?」
「はい」
「うん。そのドレミファソラシドはまぁ言い換えるって言った方がいいかな、ドレミファソラシドはCDEFGABCって言い方もあるの」
ドレミというのはイタリア語が元となったもの。アメリカなどではアルファベットでCDEとなる。コード進行などでも使われるので音楽をする上では覚えておくと便利な基本である。
「柚梨ちゃんがいま弾いたのは6弦だね。一番上にあって太い弦」
「6弦……」
「下から1弦2弦3弦と来て上が最後第6弦。まず6弦を会わせてみようか、ヘッドのペグっていう銀色のつまみを回してみて」
ギターのチューニングは原則、一番近い6弦から合わせていく。ペグとよばれるものを回すことで張られた弦の音の高さが変化する。
「あっ……こ……怖い……」
準備室にあったものが授業に使うこともあり使い込まれたもののためか、やや回しづらい上に回す度に擦れる音がする。
下手に回すと弦が切れてしまうのではないかという恐怖心を抱きながらペグを回す。
「大丈夫大丈夫、たまに切れるけど基本的には問題ないから。回しながら弦を弾いてみて」
大丈夫と言いながら「たまに切れるけど」と言うのは説得力がなくて不安だが表示されるアルファベットを見ながら弦を弾く。
「6弦はEって表示に合わせてみて。もう少し」
Eという表示になるまで調節をしていく。
「ちょっと行き過ぎかな」
「このくらい……?」
「おっ、そこそこ。これを5弦から1弦までやってみて」
「わ……わかりました」
したことのない姿勢ゆえにだんだん背中が痛くなってくる。
たまに軽く背伸びも挟みながら次は5弦へと指を当てる。
「アコギは正直エレキより大きくて難しいけどこれを経験しておけばエレキには入りやすいと思う。頑張ってっ!」
少しずつではあるが進歩を実感する私なのであった──。
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