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「やあ、柚梨。急に呼び出してごめんね」
眩しい日差しが髪の毛を溶かすかのように照りつけ、校門の近くに大きく伸びる木の枝に守られるように作られた鳥の巣からは小鳥が声をあげる。そんな中、私たちはの近そうで遠い距離感と雰囲気は完全に深刻な状況だ。
「まぁ、別に予定なかったからいいよ。で、どうしたの?」
このまま何も言わなければ無言の時間が続いていくだけであると私は直感した。私としてはこの雰囲気が長く続いて貰うのは勘弁してほしいのですかさず『先制攻撃』という名の質問をぶつける。
「うん、昨日のことなんだけどさ」
「昨日?」
私はここですべてを察してしまった。
ここに至るまでにずっと考えていた華蓮が呼び出した理由のいくつものパターン。そこに「昨日の事」が当てはまるとすればひとつしかなかった。
「そういうことか」
ため息をつくように小さく小さくそう呟いた。華蓮からすると問題なことなのだろうが、私は違う。「なんだそんなことか」と思って気にして損したというか華蓮らしいというか。
「きの………」
「昨日の帰りの事なんだけど。でしょ?」
華蓮が目線を私の足元くらいに落として小さくだが口を開いた時に、私はそれ掻き消すように彼女の言いたいことを言って見せた。
「…………っ」
「なぜわかったの?」と言わんばかりの大きく開いた瞳と疑問に溢れた顔をぶつけてきたのだ。
「まったく、何年一緒にいると思ってるの」
「そ、そうだね」
さらに、私にはもうひとつこの問題についてこんなに堂々としていられる、こんな問題で安心してしまった理由がある。
「見たんだね。私が他の人と帰っているのを」
「当たり。確かに私は昨日部活前に帰りの約束してなかったこともいけなかった。でも柚梨が………」
私が4人と一緒に帰ったことを見るのは初めてということが彼女の言いたいこと。高校で新しい友達の繋がりができる、そんなことはこの先であっても普通と言えば普通なのだ。しかし、華蓮は天然で明るい性格ではあるが本当は私以上の人見知り。
多く友達がいるわけではなく、ほとんどは彼女の中では「知り合い」という部分で止まってしまう。そこをぶち破った存在が自慢ではないが私なので高校にもライブにも誘ってくれたのだ。
簡単に言うと華蓮は私と自分が「似ている」と強く思っている。だから昨日の事は余計に衝撃だったのだろう。
「柚梨………変わったね。私の知らないところで、いつの間にか」
「集団の中にいる私がそんなに変?」
「変じゃない、でも私と同じような存在だと思った柚梨があんな楽しそうに」
軽く首を横に降りながら彼女は言った。
そこでだ。私が安心した一番の理由の出番。
これに対しての結論を私は持っている。
「それは簡単だよ」
私は再び視線を私の足元へと落としている華蓮の視界に割り込ませるように手を伸ばした。
悩んでいた私を救ってくれた、あの時部長が私にしたように。
「柚梨?」
「華蓮も入ればいいんだよ。集団に」
「え?………でもそれは」
「華蓮は私と自分が同じようだと思っているんでしょ?なら私が集団に入れたということはできると思わない?」
「でも……人見知りが」
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