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告白
静かに呟いたはずのあたしの声は、微かに震えていた。
「七瀬ちゃん」
「ん?」
「絶対、男にこんなことしたらだめだよ。そいつに七瀬のこと、好きになられちゃったら困るもん」
「どういうことよ?」と七瀬は笑った。
「他の人にしたら、だめなの?」
「だめ。……あたしはその辺の男なんかに、七瀬のこと、絶対渡さないから」
「はいはい、わかりました」
感情が昂り過ぎて、ついには鼻をすすりはじめたあたしを見かねて、だだっこをあやすように、七瀬はあたしの頭をくしゃくしゃと優しく撫でてくれた。
ぽた、ぽた……とテーブルに透明な雫が落ちてゆく。それがあたしの涙だということは、今更考えるべくもないことだ。泣くことないでしょう、と困ったように笑う七瀬が、そっとおしぼりを手渡してくれた。
冷たい雨の中を彷徨っていたあたしに、七瀬は傘を差し出してくれた。
だから、あたしはこの傘に、七瀬も一緒に入れてあげたい。温もりを奪ってゆく雨だけじゃなく、この子を傷つける全てのモノから守ってあげたい。
それが、あたしが大切な友達にできる最善のことなのだと、素直にそう思ったのだった。
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