包装

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 すると、七瀬は「あ、そうだ」と呟いて、傍らに置いた自分のトートバッグをごそごそと手で探りはじめた。テーブルの上に七瀬のスマートフォンがないところをみると、それを探しているのかもしれない。何せ、まだ会計の時間までは余裕がある。財布を出すことは考えにくかった。 「あった、あった」  七瀬がそう言いながらバッグから取り出したのは、掌よりは余る大きさの、縦長の箱のようなものだった。赤い包装紙でラッピングされていて、中身を窺い知ることはできない。けれども、その包みには、なにやら可愛らしいリボンでデコレーションがしてあって――。 「はい、美玖」 「へっ?」  七瀬は、両手で捧げ持つようにして、あたしにそれを差し出してきた。こういうとき、あたしはすぐに二の句を継げない。ああ、彼氏にこれを渡そうと思ってるんだ、という相談か。あたしのセンスより七瀬のそれの方が格段に女らしく可愛いと思うんだけどな。  ん、そもそも七瀬は今、フリーだった気がする。そもそもそれなら、あたしに向かって「はい」なんて渡すことなんか、するだろうか。いや、しない。はいこれ、反語です。間近に迫った期末試験には出ないと思います。  えーと、ですね。 「美玖、こないだわたしの誕生日、祝ってくれたでしょう。その、お返し」 「あ……」
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