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「じゃあ先に帰るから。最後の人、戸締り宜しくね。」
うちのオフィスは、事務職を除いては基本的に決められた勤務時間がない。
担当のクライアントや依頼に応じて、自分たちで1日のスケジュールを立てる。
いつもは最後まで残ることが多いが、今日ばかりは仕事を持ち帰ることにした。
焦る気持ちを落ち着かせながら車を走らせ、家路へと急ぐ。
俺からの一方的なメールに、会津からの連絡はない。
けれども何故か不安にならないのは、彼女を信じているから。
もし来られないというのなら、彼女はそう返事してくれると。
自分に都合の良い理想論と言われたらそれまでだが……。
渋滞に巻き込まれながらも、いつもより早い時間にマンションの駐車場に到着した。
7階の部屋を駐車場から見上げたけれど、明かりはついていない。
玄関の扉を開けると、中には会津の靴があって、俺の帰りを笑顔で出迎えてくれる。
そんな夢みたいな話は、流石になさそうだ……。
妄想は程々にしておかないと。
「……真面目に仕事でもするか。」
家に入ると、仕事部屋へ直行する。
取り敢えず、明後日が納期の仕事の続きでもして、気を紛らわすことにしよう。
仕事をしてる間は、不思議と他のことを考えなくて済む。
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