12年越しの告白

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. 彰浩が口にする名前。 何を隠そう、彰浩は妻帯者だ。 相手は高校時代の同級生で、俺も当時から知っている。 その頃の彰浩は野球部で、マネージャーだった梅本さんにベタ惚れだった。 入部した頃から彼女の話題ばかりで、夏休み前にはちゃっかり付き合い始めていた。 それからずっと二人は一緒にいて、大学を卒業して少し経ってから結婚した。 「……彩夏のことなら平気だよ。今、実家に帰ってるから。」 「え……?それって……」 「修羅場じゃねえよ。何年一緒にいると思ってるんだ、もうすぐ15年だぞ!?」 確かに、この二人に関しては不要な心配だ。 何年経っても、変わらず仲が良いのは知っている。 本当にお互いを大切にしているのが伝わってくる関係だ。 そう納得しながら、待望のモツ煮込みと生ビールを注文していると、今までハイテンションだった彰浩は、急に素面に戻って静かに口を開いたく。 「実は……子供できたんだ。」 「えっ!?」 「先週、知ったんだ。まだ全然実感なくてさ。」 突然の報告に対して普通に驚いてしまったが、二人は結婚して長いし、俺たちはもう30だ。 むしろ今まで、そんな話が全く無かったことのほうが意外なのだ。 .
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