12年越しの告白

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. 「休みの日に手伝わせて悪いな。助かるよ。」 「構いませんよ。大樹さんも色々任されたばかりで、大変でしょうし。」 「……ただの、鍵の番人だよ。」 「じゃあ、この鍵を番人である大樹さんに託しますね。無くさないで下さいよ。」 そう言いながら、可児君は鍵を手渡してくる。 それを自分のキーケースへと大事にしまった。 この場所は、デザイナー4名、その他サポートや事務関連を担う2人が所属する、こじんまりとした小規模な事務所になる予定だ。 ここでの俺の主な仕事は、トレンドに合わせた新しいデザインを考えること、依頼に合わせたコンセプトを考えてプランを練ること。 それを明確に職人へ伝え、形あるものへと創り上げること。 新しい環境には違いないが、仕事内容に関しては今までと変わらないので、不安は全くない。 ひとつだけ憂鬱の種があるとしたら、この東京オフィスの責任者になってしまったことくらいだろうか。 まあ、仕事の依頼などはパリのオフィスを通して流れてくるがほとんどなので、責任者としての特別業務といえば、ガスの元栓と事務所の鍵をしっかり閉めて帰ることくらいなのだが。 .
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