12年越しの告白

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. 午前からぶっ通しで、明日から使用するオフィスの片付けを進めていると、何の前触れもなくピンポーンとインターホンが鳴った。 「誰か来たのかな……?」 そう言いながら、パソコンの配線をしている可児君が手を止めて立ち上がろうとするが、それを制して代わりに対応へ向かう。 念のためインターホンのカメラを確認すると、知った顔だったので安心して扉を開いた。 「こんにちは。」 「夏野さん、どうかしたの?」 「今日、事務所の片付けをしているって聞いたので……差し入れです。良かったら、お昼食べませんか?」 ニコリと微笑みながら、紙袋を二つ差し出してくる。 片方にはカフェでテイクアウトしたコーヒーと、もう片方には美味しそうなパンが沢山入っている。 どうやら、わざわざ買ってきてくれたようだ。 「ありがとう。そろそろ休憩しようと思っていたんだ。」 「私も入っていいですか?」 「勿論だよ。明日からは嫌でも来てもらうことになるんだから。」 俺の言葉に、彼女は頬を緩ませる。 彼女も明日から、ここで働くことになる事務の女性だ。 1年ほど前に携わった依頼で、少しの期間だけ一緒に仕事をして知り合った。 それ以来、ほとんど会うことはなかったが、ここにオフィスを構えるという話を人伝に聞き、手伝いたいと申し出てくれたそうだ。 .
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