12年越しの告白

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. 夏野さんの差し入れで、ひと休憩することにした。 可児君と夏野さんは初対面だけど、歳が同じということで、打ち解けるのに時間は掛からなかった。 ちなみに二人とも俺より5歳年下で、可児君に至っては、その歳にして3児の父親だというから驚きしか出てこない。 休みの日は、家族サービスで大変らしい。 そんな平和な話題で、今ちょうど盛り上がっている。 「そういえば、大樹さんて、休みの日は何しているんですか?」 「俺もそれ知りたいです。六本木あたりの海の見える高層ビルにある、ラグジュアリーな会員制のスポーツジムで、トレーニングでもしているんですか?」 一斉に質問を向けられて、一瞬言葉に詰まってしまう。 とりあえず、可児君の問いかけには後でツッコミを入れるとして。 「そうだな……パリにいた時は、美術館に行ったり、知り合いに料理を教わりに行ったり……。でも、何もせずに自堕落に過ごすことも多かったよ。」 「美術館、好きなんですか?」 「割とね。時間を忘れられる空間っていうのかな、そういう雰囲気が好きなんだ。」 今は自宅でも引越しの荷物を片付けるので手一杯だけれど、落ち着いたら時間を作って、近くの美術館を訪れるつもりだ。 「私もわかります。日常から切り離された場所って感じで、心が落ち着きますよね。」 「やっぱり大樹さんて……趣味まで格好いいな。俺も今度、行ってみようかな。」 そんな風に言われたのは初めてだった。 雅兄には地味だと、彰浩には若さがないと、散々に言われ続けた趣味のひとつなので、肯定してくれる二人の反応は正直少し照れ臭かった。 .
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