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暫くして可児君がコンビニへ煙草を買いに行っている間、夏野さんと二人きりになった。
別に気まずい雰囲気とかではないけれど、ムードメーカーである可児君が居ないだけで、急に部屋が静かに感じられる。
何を話そうかな、と考えていると、先に口を開いたのは彼女の方だった。
「もし良かったら、今度の週末に横浜にピカソ展……一緒に見に行きませんか?」
「え?」
「知り合いから前売券頂いて、それで……さっき美術館の話になった時、来週いっぱいで終了すること、思い出したんです。」
俺の趣味を知って、気を遣って誘ってくれたのかもしれない。
とても有り難い話だが、その日は先約はある。
「ごめん、来週は予定があるんだ。」
彰浩から誘われた同窓会。
いつもスルーしていたから、たまには参加して顔を立ててやらないと……。
すると、彼女は遠慮がちに訊いてくる。
「もしかして……彼女と、デートですか?」
「違うよ、高校の同窓会。それに俺、こっちに戻ってきたばかりだし、デートする相手なんて居ないよ。」
「そう、なんですね……分かりました。あ、そろそろ私、時間なんで帰りますね。」
休憩を始めて1時間が経とうとしている。
俺の方も、そろそろ作業を再開する頃合いだ。
「可児君にも宜しく言っておいて下さい。」
「分かったよ。今日は、来てくれてありがとう。明日から宜しくね。」
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