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「そういや、彰浩たちまだ来ていないよな?」
「さっき電話した時、少し遅れるかもって言ってたけど……」
時間になり、参加者は続々と集まってくるが、肝心の彰浩たちはまだ到着していない。
まあ、各々が既に盛り上がりつつあるので、誰も幹事の遅刻を気にしている様子はないのだが。
俺もそのうちの一人だ。
「あ……来たんじゃね?」
そう言って、いち早く気づいた須永は、店の入り口へと近づいていく。
俺はその場に留まり、他の友人達とたわいもない話を続けていた。
しかし、須永の大きな声がそれを妨げる。
「仁科夫妻と、会津番長の登場だな!」
思わず反応して視線を向けてしまった。
だって、気にならないはずがない。
かつて好きだった相手が、12年の時を経てどう変わってしまったのか。
名前を呼ばれて、彰浩の背後から登場した会津。
久し振りに見る彼女は、昔の面影を残しつつも、凄く綺麗になっていた。
そう感じてしまうのは、淡い初恋の相手だというフィルターを通しているせいかもしれないが。
俺はというと、昔と同じように遠巻きに、彼女を静かに見つめているだけだ。
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