7537人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「あれ? サチコ、まさかの睡眠?」
「そのまさかだよ。」
「全く、人騒がせなサチコのやつ……余計な心配して損したよ。」
目の前には、ソファーに横たわる会津の姿。
彰浩が持ってきてくれた濡れたハンカチを、彼女の額の上に乗せる。
「大ちゃん、帰るところだったよな。代わろうか?」
「いや……もう少し、ここにいるよ。」
何故か、離れ難かった。
彼女のことが心配だったのもあるが、それだけではない。
これが違う相手だったなら、俺は彰浩に全てを託して帰っていただろう。
ただ、もう少しだけ……こうしていたかった。
「……じゃあ、サチコの面倒は頼んだぞ。」
「分かったよ。」
「ちなみにこいつ独身彼氏なしだから、お持ち帰りしても問題ないぞ。」
「……また吐かれても困るから、それは遠慮しておくよ。」
そう答えると、彰浩はフッと笑いを零し、小さく手を振りながらその場を離れていった。
ていうか、彼氏居ないんだ……。
昔と変わらず苗字で呼ばれているのを聞いて、まだ結婚はしていないのだろうと予想はしていたけれど。
いやいや、別に彼女に手を出すつもりで、面倒役を買って出たわけではない。
俺はあくまでも善意として……。
.
最初のコメントを投稿しよう!