12年越しの告白

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. 自分自身に対して必死に言い訳していると、ソファーの軋む音と共に、会津がゆっくりと動く。 「気がついた?」 「あれ、私……」 「呑みすぎだって。あんなに吐くまで呑むなんて。」 彼女が起き上がろうとするので、俺は手にしていた冷たいおしぼりを渡しながら話しかける。 「あんなにって……えっ、まさか……だよね?」 「クリーニング代は、後で請求するから。」 どうやら記憶に残っていない様子。 汚れた服のことなど本当はどうでも良かったが、紙袋に入ったグレーのジャケットを指差しながら言った。 すると明らかに、しまった……と言いたげな表情を浮かべる。 「会津って、お酒弱いの?」 「うん、まあ……ってあれ? もしかして……新居?」 どうやら正気に戻ったようで、驚いたようにじっと見つめられる。 気づくの、遅すぎだろ。 「今更気付いたのかよ……。」 俺はここに来てから無意識のうちに、ずっとお前のことを目で追っていたのに。 その視線は一度も交わることはなかった。 それでも、嬉しそうに輝いた目で見つめられてしまったら、そんな小さな憂いは簡単に吹っ飛んでしまうんだ。 .
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