12年越しの告白

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*** 会津の具合がマシになったので、俺は駅に向かおうとしたが、酔いさましに歩きたいと言った彼女に付き合うことにした。 素面ならまだしも、こんな状態で一人にするのは心配だったので、取り敢えずだ。 「大丈夫か?」 「さっきよりは随分良くなったよ。」 「水、飲むか?」 「……かたじけない。」 俺の飲みかけのペットボトルを、躊躇うことなく口にする。 高校時代なら、それは恋い焦がれるシチュエーションなのかもしれないが、流石にこの歳では何も感じない。 大人になるって、こういうことなんだな……。 「ごめん……全部飲んじゃった。」 「いいよ、残り少なかったし。」 「お水のお礼に、あとでチャイラテ奢ってあげる!すごく美味しいテイクアウトの店が、この近くにあるんだ。」 そう言いながら、俺に向けられる無邪気であどけない笑顔。 彼女といると優しい気持ちになれるのは、昔も今も変わらない。 .
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