12年越しの告白

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. 「それだけ? 他には覚えていない?」 「他に……?」 真意があって会津が口にした言葉なら、彼女自身が覚えていないはずがない。 ちなみに、彼女のことを好きでなければ、俺も冗談として聞き流していただろう。 悩ましげに考える素振りを見て、期待は非常に薄くなる。 「ごめん、ちょっとわかんない……で、何なの?」 「……その約束、今でも果たしてくれる?」 「え?」 「果たしてくれるなら、教えてもいいよ。」 こんな条件が受け容れられるはずがない、そう思ったから言ってみただけだ。 彼女にとっては何の意味も持たない言葉を、今更掘り返す必要はあるのだろうか。 「私で、果たせることなの……?」 じゃあいいや、と。 そう断られることを前提にしていたので、思いがけない返答に、こっちが戸惑ってしまう。 果たせないことではないから、頷いてみせる。 でも、果たされることではないと確信している。 「うん。わかった……ちゃんと守るから。だから、教えて?」 だって、こんな馬鹿みたいな口約束、果たされるわけないんだ……。 俺と彼女の関係は、12年前と少しも変わっていないのだから。 「……じゃあ、俺と結婚しようか。」 .
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