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「それだけ? 他には覚えていない?」
「他に……?」
真意があって会津が口にした言葉なら、彼女自身が覚えていないはずがない。
ちなみに、彼女のことを好きでなければ、俺も冗談として聞き流していただろう。
悩ましげに考える素振りを見て、期待は非常に薄くなる。
「ごめん、ちょっとわかんない……で、何なの?」
「……その約束、今でも果たしてくれる?」
「え?」
「果たしてくれるなら、教えてもいいよ。」
こんな条件が受け容れられるはずがない、そう思ったから言ってみただけだ。
彼女にとっては何の意味も持たない言葉を、今更掘り返す必要はあるのだろうか。
「私で、果たせることなの……?」
じゃあいいや、と。
そう断られることを前提にしていたので、思いがけない返答に、こっちが戸惑ってしまう。
果たせないことではないから、頷いてみせる。
でも、果たされることではないと確信している。
「うん。わかった……ちゃんと守るから。だから、教えて?」
だって、こんな馬鹿みたいな口約束、果たされるわけないんだ……。
俺と彼女の関係は、12年前と少しも変わっていないのだから。
「……じゃあ、俺と結婚しようか。」
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