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って、俺は迂闊になにを口走っているんだ……!?
こういう時、普段の会津なら明るく言い返してきそうなのに。
ポカンと間が抜けた顔をしながら黙り込むので、一瞬にして全身の血の気が引く。
冗談だと誤魔化して、穏便に雰囲気を和ませることもできただろう。
けれども、俺が彼女を好きだったのは事実だし、今も強く惹かれてしまう気持ちに嘘を吐きたくはない。
「……何で、黙るの?」
冷静さを取り戻し、なんとか声に出して問いかける。
「……冗談きついよ。」
「約束したじゃん。」
「何を……?」
「結婚しようかって……しかも会津から。」
「ええっ!? してないよっ!!」
「したよ。」
― じゃあさ30になったら、会いにきてよ。
あんたの成功を一緒にお祝いしてあげる。
それでもし、独身だったら…結婚しちゃおうか。
想いを伝えることができずにいた相手に、そんなことを突然に言われて、簡単に忘れられるはずがない。
勿論、それが本気の口約束でなく冗談なことくらい、百も承知だ。
果たされる期待など微塵もないが、それに縋ることが、今の彼女に少しでも近づける手段なのだ。
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