彼女と指輪

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. 救急車を呼ぼうとも考えたが、問いかけに対しては反応を示してくれるので、そこまで深刻な様子でもない。 しかし、これ以上歩かせることも出来ないので、彼女を背負い、大通りでタクシーを拾って帰ることにした。 運良く流れてきたタクシーに、彼女と一緒に乗り込む。 「会津、タクシーで家まで送っていくから。住所は?」 「……上………」 「おい、上って何処だよ。」 「3階……」 「いや、部屋の場所じゃなくて……。」 このままでは先へ進めない。 仕方ないので、一時的な措置を取るしかなさそうだ。 俺のマンションを行き先として運転手に伝え、漸く動き出したタクシー。 彼女が途中で目が覚ましたら住所を訊いて、行き先を変更してもらえばいい。 そう思っていたのに、ついには静かに寝息を立て始める。 いや、また寝るのかよ……。 仮にも男と二人で、会津には危機管理能力がないのだろうか。 それともやはり、俺はそういう対象ではないという、彼女からの無言の訴えなのかもしれない。 俺の肩に寄りかかり、気持ちよさそうに眠りに就く彼女が、憎らしくもあり愛しくもある。 .
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