17歳と午後3時

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 あたしたち5人は  再開発のあおりを受けて放置された  廃ビルの屋上で  いつものように放課後を過ごしていた。  ビルの向こうに見える  夕日がまだ沈み切っていない  冬至(とうじ)の、ある夕暮れの時だった。 「一生を一日で例えると、17歳って午後の3時くらいだよね」  ヨーコが空を指さした。  みんなは何かあるのかなって見上げたけど、まだ明るくて月は見えなかった。 「ちょっと……何言っているか、分からない、かも」  カザミは考えるのに少し時間のかかる子で、いつも返事はゆっくりだ。 「17歳で3時なら"誕生"は?」  サエは眼鏡をくいっ。とあげた。彼女は委員長をしていた。   ヨーコは少し考えて「12時」と答えた。 「あーっ、なるほどね、なるほどねっ、それっぽい!」  メイはいつも、好奇心旺盛で無邪気だ。 「ボクは分かるよ。午後の3時って、昼でも夜でもない、曖昧さがいいよね」  ナギサは、見た目は男の子っぽくて、声もハスキーボイス。でも女の子  あたしたち5人は、社会に適合できていなくて  居場所を求めてた  だけど、みんなそれを口には出さない  自分の素性とか体と心のキズの見せあいとか  そういうのはしない  放課後、午後3時。あたしたちは自然と集まった  ここが自分たちの居場所だと、知っていたみたいに。
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