take an umbrella

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私と親友の進行方向に一人の女生徒が見えてきた。親友はそれを見て軽やかな足取りで女生徒の方に走っていた。親友はその女生徒の隣に行くと肩をぽんぽんと叩いて振り向かせた。その女生徒は親友の彼女である。私は一切知らないし感知しないが付き合っているらしい。幼い頃から知っている親友に彼女が出来たことに私は嫉妬と羨望の感情を覚えたが、最終的には羨望が上回り、親友に春がきたことを言葉には出さないが祝福することにした。 最近は親友もあの彼女さんにご執心なのか私が何処かに遊びに行こうとか誘っても「彼女と遊ぶから」と遥か上の雲上人みたいなことを言って断られている。昔は毎日一緒に遊んでいたのにどうしてなんだよと怒る感情もいつしか消え失せていた。学校に着いた私は傘を傘立てに入れた。流石に皆天気予報を信用しているのか傘を持ってくる者はあまりいない。傘立てにあるのは多くの置き傘であった。  それから数時間後、昼休憩を前にして腹時計が朝食で食べたトーストとハムエッグを完全に消化し「ぐー」と言った鳴き声を上げだす頃に私はふと窓の外を見た。頬杖をついて見上げる空は今朝までの雲こそ多いが青い空はその姿を黒雲を纏った鼠色のアスファルトのような空へと様変わりしていた。耳を済ませば遥か遠くに聞こえる天を破り巨木を折り焼く雷電の嘶き、その前準備をするかのように私が見ている黒雲もフラッシュのような光を放ちピカっ! ピカっ! と輝く度にクラスの女子がキャーキャーと叫びを上げる。それから間もなくに雨が降り出した。授業を行う教師の声も全てを穿つかのように降り注ぐ雨音に遮られる。この雨音でも女子同士はカクテルパーティー効果が発動しているのか雨音に遮られず私語をする。 「どうする? あたし傘持ってきてないよ」 「ほんと天気予報アテにならないよね」 「あのお姉さん綺麗なだけで駄目よ」 「あれでも気象予報士かしら」 天気予報のお姉さんも酷い言われようである。ちなみにお天気お姉さんは気象予報士の資格を持っていない者が大半である。気象予報士は国家試験の気象予報士試験に合格した者のことである。お天気お姉さんは局から渡された天候予想の原稿を笑顔でハキハキ読む見目麗しいアナウンサーである。一緒くたにしてはいけない。
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